ホームランはヒット4本分の価値があるのか
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ホームラン=4塁打=ヒット×4?
「ホームランは4つ塁を進むことができるのに対して、ヒットは1つ塁を進めることができる。だから、ホームラン = ヒット4本分の価値がある」という主張はなかなか説得力があるように思えます。
また、長打率という指標では、実際にヒット : 2塁打 : 3塁打 : ホームランの価値 = 1 : 2 : 3: 4 として計算を行っています。
しかし、ホームランには本当にヒット4本分の価値があるのでしょうか。今回はこのことをテーマに検証していきたいと思います。
答えはNO
新鮮な話題感を出していますが、セイバー界ではすでに明確な答えが出されています。得点期待値表を用いることによって、それぞれのイベントに対する期待値の増加量を計算で出すことができます。その結果、ホームラン : ヒットの価値は 1411 : 446 です。ざっくり整数比で出すと、3 : 1 くらいでしょうか。なぜ4 : 1 にならないかというと、(おそらくですが)ヒットの場合、ランナーが2つ以上塁を進められる可能性があるからです。
このように打者が起こすイベントに対して価値の比重を出すことは、実はとても重要です。以前打率が選手を評価する指標として不十分だという記事の中で出てきたように、打率ではイベントに対して1か0かでしか評価できません。逆に言うと、イベントに対して適切な重みづけができれば、選手を得点貢献という基準で、対等に評価できるような指標を作ることができます。
この重みづけは回帰的に求められるので、リーグや年度ごとに、小さく変動があります。今回は例としてwikipediaに載っている数字を紹介します。
イベント | 1B | 2B | 3B | HR | BB | OUT | 盗塁○ | 盗塁× |
重み | 0.446 | 0.783 | 1.143 | 1.411 | 0.302 | -0.261 | 0.168 | -0.382 |
凡打等は得点期待値を減らすイベントなので負の値をとります。
その重みづけを活用した指標(の1つ)がwOBAです。wOBAでは打者が起こすイベントを適切に重みづけし、出塁率スケールで数値化しています。この指標の凄いところは、出塁率が高いけど長打は打てない、三振多いけど当たったらホームラン、といった、様々な特徴を持っている選手を、対等に、1つの数字だけで評価できる点にあります。NPBのwOBAを公開しているサイトは現在1.02 - Essence of Baseball | DELTA Inc.のみなので、まだまだ日本ではマイナーな指標ですが、現時点で打撃能力を表す最も優れた指標と言われているので、要注目の指標です(ちなみにWARの打撃能力の評価は(ほぼ)wOBAを使っています)。
まとめ
ホームラン : ヒット = 3 : 1 ほどの価値の比重があります。wOBAはイベントの価値を適切に重みづけした、現時点で最も優れた打撃指標の1つといわれているので、注目してみてください。