BBANALY プロ野球データ分析

NPBのデータから、野球に関する議論や迷信を検証していくブログです。

「柳田打線VS上林打線」で柳田打線は全勝できるか

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試合結果は能力差を反映できるか

※このブログでは、打線Aと、打線Aより成績の劣る打線Bを用意し、試合を行って打線Aが勝つことを「試合が能力差を反映できた」と呼ぶことにします。

 

 戦術等の影響を完全に無視した場合に、勝敗を決定する要素は選手の能力(得点を増やすようなイベントを起こす確率)と運です(少なくともシミュレータ上では)。ですが、前回までである程度分かったように、野球という競技の性質上、試合数が少ないほど、運が試合結果を大きく左右してしまっています。

 そこで今回は能力差のある打線を用意し、設定した試合数を実行することで、試合数nに対してどれほど能力差が影響を及ぼすのかを検証します。

 

具体的な調べ方

1、能力差のある打線を用意する

 今回検証で用いる打線について説明します。

 当初は架空の打線を作る予定でしたが、数字で能力差を説明するよりも、現実の打者で説明した方が分かりやすいと思ったので、今回はソフトバンクの柳田選手と上林選手の2018年シーズン成績を使って、柳田打線vs上林打線で検証を行うことにします(走力は一定です)。

 なおなぜその2人になったかですが、主な理由としては

  • はっきりとした実力差がある
  • チームが同じ

 の2点です。1.02 - Essence of Baseball | DELTA Inc.こちらのページの、wRC+という指標に注目します。wRC+は一打席当たりの得点貢献を指数化している指標です。柳田選手が207、上林選手が125であるため、二人の得点貢献の差は約65%と、十分に能力差があります。本来この値は選手が持つ能力ではなく、結果ですが(真の値±誤差)、こちらを能力としてとらえることにします。

 また、wRC+はパークファクターによる補正を含んでいるため、本拠地が同じ = チームが同じ2人を選びました。

 二人の2018年シーズンの成績です。十分な成績差があるかと思います。

  試合 打率 長打率 出塁率
柳田 130 0.352 0.661 0.431
上林 143 0.27 0.488 0.315


npb.jpより)

 この2人について100000試合を行ったところ、平均得点はそれぞれ10.11と4.76であることが分かりました。平均得点が10.11点 vs. 4.76点である打線の対決ととることもできます。


2、試合数の設定

 試合数は、1, 3, 7, 143として、それぞれ10万セット行います。

 

3、使用するシミュレータ

 自作したシミュレータを使用します。現実と違う点は主に以下の通りです。詳しい内容は野球シミュレータの開発に書いてます。

  • エラーによる出塁は実装できたものの、エラーの頻度を変更することはできない(守備力が一定)
  • 走力が一定
  • 塁上のランナーが打撃結果以外で進塁したり、アウトになったりすることがない(盗塁や牽制死、ワイルドピッチ等がない)
  • バントがない
  • 凡打の中の比率は変更できない(ゴロを打ちやすい選手、フライを上げやすい選手などの区別はできない)
  • 点差を考えて戦略が変わることはない

 

なお、はじめの10万試合以降は、はじめの10万試合で得られた得点分布から得点を出しているため、シミュレータは使用しません(速度向上のため)。

 

検証

1、1試合

 検証の結果、柳田打線の79732勝15270敗4998分(9回で試合終了)となり、柳田打線の勝率は.839となりました。したがって、「1試合」は柳田選手と上林選手の能力差を約84%の確率で説明できるということが分かりました。逆に言うと、平均得点に5点ほど差があっても、約16%の確率で勝つことができるということになります。

2、3試合

 クライマックスファーストステージを想定して、3試合中2試合勝った方を勝ちとします。検証の結果、柳田打線の93053勝6947敗(引き分け再試合)となり、柳田打線の勝率は.931となりました。「3試合」は柳田選手と上林選手の能力差を約93%の確率で説明できるということが分かりました。

3、7試合

 日本シリーズを想定して、7試合中4試合勝った方を勝ちとします。検証の結果、柳田打線の98481勝1519敗(引き分けは再試合)となり、柳田打線の勝率は.985となりました。「7試合」は柳田選手と上林選手の能力差を約98%の確率で説明できるということが分かりました。

4、143試合

 ペナントレースを想定して、143試合中72試合勝った方を勝ちとします。検証の結果、柳田打線の100000勝0敗(引き分けは再試合)となり、柳田打線の勝率は1.000となりました。「143試合」は柳田選手と上林選手の能力差を100%の確率で説明できるということが分かりました。

まとめ

 柳田選手と上林選手ほどの実力差(平均得点にして約5点程度)があっても、1試合ではその能力差を説明する能力が84%ほどにとどまるということが分かりました。これだけ能力差があっても16%負けてしまうので、運の介入が十分大きいといえると思います。 

 また、試合数が増えるごとに能力差を説明する能力は上がっていき、ペナントレースでは100%能力差を示せていることが分かりました。

「平均得点が約5点違う」という数字の大きさですが、

パ・リーグの順位表、投手成績、打撃成績 - プロ野球データFreak

こちらのページで確認したところ、2018年シーズンで平均得点1位の西武と平均得点12位の楽天を比較しても、その差は1.9点しかありません。そのことを考えると、どれだけ戦力差があるのかが分かると思います。

 次回はもう少し実力差の大きな選手で検証します。