BBANALY プロ野球データ分析

NPBのデータから、野球に関する議論や迷信を検証していくブログです。

チームUBRの年度相関

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ベースランニングの指標UBR

ベースランニングを評価する指標の一つに、「UBR(Ultimate Base Running)」というものがあります。この指標を一言で説明するならば、「ベースランニングによってどれだけ得点(期待値)を増やしたのか」です。アウトカウント×ランナーの24通りの得点期待値表を基にして、実際に起こった安打やタッチアップの際、ランナーがどのような挙動をしたのかを集計し、計算を行っています。ちなみにNPBのUBRはDELTAで公開されています。

twitter界隈では、この指標を用いて、あるシーズンの個人やチームの走塁貢献を評価するような投稿をたまに見かけます。見た目や印象に囚われずにデータに基づいて定量的に走塁を評価することはすごく重要なことだと思うのですが、「UBRが選手(チーム)の走塁能力をどれだけ反映しているのか」ことに関する議論はあまり見かけないような気がします(少なくとも日本語では)。そこで今回はUBRに関して留意しておいた方がよさそうなことをまとめたり、気になったことを調べてみたりしました。

 

1、UBRを決定しているであろう因子

UBRの数値を決定している因子としては以下のようなものが挙げられるかと思います。

  • 足の速さ(ベースランニングの速さ)
  • 走塁判断能力

(1)足の速さ

言うまでもないことですが、足の速さはUBRに影響を与えます。例えば走者が2塁にいる際にシングルヒットが出ると、足の速い選手ほど3塁を回って生還する可能性が高くなり、足の遅い選手ほど3塁でストップする可能性が高くなります。そのため、その走力差は計算に反映されることになります。

(2)走塁判断能力

これも当たり前のことではありますが、行けるときは進塁し、無理そうなときは自重するという判断を適切に行えば、得点期待値を増加させることができ、UBRの値も良くなります。走者自身に対しての判断能力はもちろんですが、3塁コーチャーの判断能力もここに含まれるでしょう。

(3)運

UBRを決定する要素として、運もそれなりのウエイトを占めることは考慮しなければいけません。安打は安打、外野フライは外野フライとしてしか評価せず、その際の守備隊形や打球位置は考慮されないためです。ヒットを打った際の打球位置や打球角度が、たまたま走者にとって有利に働くようなこともあれば、不利に働くこともあります。チーム単位で見るならば、そのようなイベントが起きたときのランナーがたまたま足が速い選手だったor遅い選手だったというようなことも十分に考えられます。

 

特に気を付けるべきは運の部分のように思います。いくら優秀な走者やランナーコーチャーがいても、野手正面への強い打球が飛んだクリーンヒットや、内野と外野の間に飛んだような外野フライばかりではどうすることもできません。そのため、真の走塁能力を見るためには運の影響を小さくするために、それなりの試行数が必要といえます。

次に、「試行数:1シーズン」がどれほど一貫性がある数値なのかを調べてみたいと思います。

 

2, チームUBRの年度相関

今回はチームUBRの年度相関(year to year)を求めることで、1シーズンのチームUBRにどれほどの一貫性があるのかを見ていきたいと思います(DELTAのデータを使用しました)。

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チームUBRの年度相関(NPB、2014~2018年)

横軸にy年のUBR、縦軸にy+1年のUBRを取り、その相関を調べました。その結果、年度相関がr≒0.33であることが分かりました。UBRの年度別成績には、そこまで強くはないものの、ある程度の相関がみられました。イメージが湧きづらいかとは思いますが、これは個人の打率や出塁率の年度相関に近い相関の大きさです。個人の選手の指標と違い、チームのUBRでは毎年スタメンが少なからず数人入れ替わっているため、単純な比較はできませんが、上述したような運の影響があるとはいえど、1シーズン分の試行数があれば、真の走塁能力をそこそこ反映した数値になっていると言えそうです。

一応おまけとしてチームごとの年度別UBR推移も貼っておきます。

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チームUBR推移(セ)

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チームUBR推移(パ)

2018年がやたらセ高パ低になっているのは置いといて、近年では西武・広島がリーグ内で傑出しており、巨人・楽天があまり良くない結果になっています。

 

まとめ

どんな指標にも運によるばらつきがあり、そのことを考慮して適切に数値を評価する必要がありますが、チームUBRに関して言えばシーズンごとにある程度の相関が見られることが分かりました。

近年安定してよい数字を出している西武・広島に関してですが、両チームとも打撃力の高いチームなので、「あらかじめ外野守備が深め⇒進塁が容易⇒UBRが高めに出る」といったこともありえなくはないように思います。打球位置や守備位置の考慮されたUBRのようなものが開発されれば、結果が違ってくるのかもしれません。

ちなみにランナー2塁時の単打、ランナー3塁時の外野フライの際のランナー挙動を外部サイトにまとめてみたので、興味があればご覧ください。