BBANALY プロ野球データ分析

NPBのデータから、野球に関する議論や迷信を検証していくブログです。

『チャンスに強い』は存在するか

更新時のみ呟くtwitterアカウントがあるので、よければフォローお願いします。

twitter.com

勝負強いバッター

 プロ野球界では、選手を紹介するときに「勝負強いバッターです」とか、「チャンスに強いバッターです」というような言葉を使うことがよくあります。また、得点圏打率(得点圏にランナーがいるときの打率)という指標も野球ファンにとってはおなじみで、得点圏打率が高い = チャンスに強い という認識を持っている方は多いのではないでしょうか?

 さらには野球ゲームの世界においても、チャンスになると能力が上がるような特殊能力が存在しており、「チャンスに強いバッター」の存在を印象付けている感があります。

 しかしながら、得点圏打率についてこのように考えることもできます。

 

 ヒットを打った打席がたまたま得点圏だった。

 

 かなり人間味がないというか味気ない考え方ですが、実際、ある年に得点圏打率が高かった選手が、その翌年は得点圏打率を落としたり、逆に、低かった選手が高くなったりと、得点圏打率は年度ごとの相関がほとんどないことが知られています(セイバーメトリクスでは、ある指標に対して、ある年度とその次の年度の相関を調べ、選手がコントロールできる指標なのかを判別するという手法がよくとられます(year to year)。)。

 今回は少し角度を変えて、統計学っぽく、正規分布を使って検証してみたいと思います。

方法

 統計学の性質上、「この人は得点圏で強いよ!」と100%言い切ることはできません。今回の検証で分かることは、

「得点圏で通常時と異なる能力を持っている確率は約●%」

ということになります。この確率が高ければ高いほど、得点圏に強い(弱い)確率が大きくなるという解釈です。

 

2018年度パ・リーグ打撃個人成績 得点圏打率ランキングのサイトからデータをいただきます。得点圏打数を試行回数n、打率を確率pとして二項分布を考えます。二項分布の平均と標準偏差はnp, √npq なので、求めることで、正規分布に近似ができます。そして、下側累積確率Pと上側累積確率Qを求め、1 - 2min(P, Q)が得点圏で通常時と異なる能力を持っている確率になります。得点圏打率/打率での評価と異なり、得点圏打数nを適切に評価できます。

 

結果

 計算した結果、以下のようになりました。

名前 打率 得点圏打率 確率(%)
1:柳田悠岐 0.352 0.389 59.5
2:浅村栄斗 0.31 0.369 89.2
3:外崎修汰 0.287 0.36 89.3
4:銀次 0.276 0.344 91.1
5:井上晴哉 0.292 0.342 82
6:森友哉 0.275 0.341 90.1
7:近藤健介 0.323 0.333 20.5
8:秋山翔吾 0.323 0.32 5.2
9:山川穂高 0.281 0.31 58.5
10:島内宏明 0.292 0.31 30.8
11:中田翔 0.265 0.298 64.2
12:吉田正尚 0.321 0.287 59.4
13:源田壮亮 0.278 0.287 18.7
14:鈴木大地 0.266 0.283 32.1
15:田中和基 0.265 0.279 23.2
16:西川遥輝 0.278 0.275 5.8
17:今江年晶 0.276 0.27 10.7
18:松田宣浩 0.248 0.268 39.3
19:角中勝也 0.265 0.267 3.3
20:上林誠知 0.27 0.262 14.3
21:田村龍弘 0.239 0.262 41.8
22:デスパイネ 0.238 0.26 39.5
23:藤岡裕大 0.23 0.259 58.1
24:中村晃 0.292 0.25 67.2
25:中村奨吾 0.284 0.244 69.2
26:安達了一 0.219 0.238 36.4
27:中島卓也 0.261 0.233 45
28:レアード 0.233 0.222 21.7
29:ロメロ 0.237 0.2 62.7

 

 例えば、29ロメロですが、チャンスに弱い確率が約62.7%あることが分かります。
 一般に、「偶然ではない」とする確率(有意水準)は5%がよく使われるので、その前提で見ると、表の確率が95%以上で有意ということができます。ですが、この数字は数学的な根拠があるものではないため、この確率をみて有意であるか有意でないかは皆さん個人個人の判断(感覚)に任せます。

 こうしてみると、浅村、外崎、森、銀次選手あたりは確率が高く、得点圏に強い確率が90%程度あることが分かります。この検証をする前は正直チャンスに強い選手は存在しないと思っていましたが、この4人は得点圏で、(個人的な尺度で)偶然とは思えないほどの好成績を収めていると感じました。長期的に好成績を収められるかは別としてですが。

 

まとめ

 一部の選手は単年で見ると、通常よりも得点圏で良い成績を残す能力があるのではないか、ということが分かりました。しかしながら、得点圏打率は年度相関が低いため、この数字が良かったからといって、来年度も同じように得点圏で強いとはいえず、長期的に良い成績を残すのは難しいのかもしれません。

 少なくとも単年で見たときに『チャンスに強い』選手は存在しそうです。

 ちなみにですが、先ほどの4人について、2017年度についても調べたところ、

 名前  打率 得点圏打率  確率
2:銀次 0.293 0.369 0.944
10:浅村 0.291 0.293 0.043
20:外崎 0.258 0.26 0.036

 このようになりました。銀次選手は2年連続で高い確率を記録していますが、残りの2人はめちゃめちゃ低くなりました(森選手は規定打席未到達)。

 

おまけ

 セリーグも貼っておきます。

名前 打率 得点圏打率 確率
1:坂本勇人 0.345 0.41 0.785
2:雄平 0.318 0.356 0.652
3:ビシエド 0.348 0.35 0.033
4:平田良介 0.329 0.344 0.279
5:岡本和真 0.309 0.342 0.621
6:青木宣親 0.327 0.34 0.218
7:アルモンテ 0.321 0.339 0.329
8:亀井善行 0.254 0.333 0.934
9:松山竜平 0.302 0.323 0.408
10:糸井嘉男 0.308 0.321 0.233
11:大島洋平 0.274 0.319 0.732
12:宮﨑敏郎 0.318 0.317 0.01
13:ロペス 0.288 0.313 0.447
14:バレンティン 0.268 0.308 0.765
15:高橋周平 0.254 0.308 0.818
16:山田哲人 0.315 0.3 0.265
17:ソト 0.31 0.298 0.207
18:福留孝介 0.28 0.294 0.268
19:丸佳浩 0.306 0.285 0.394
20:マギー 0.285 0.282 0.07
21:鈴木誠也 0.32 0.276 0.692
22:菊池涼介 0.233 0.274 0.741
23:坂口智隆 0.317 0.269 0.721
24:西浦直亨 0.242 0.266 0.47
25:野間峻祥 0.286 0.261 0.462
26:福田永将 0.261 0.258 0.065
27:梅野隆太郎 0.259 0.257 0.04
28:糸原健斗 0.286 0.243 0.681
29:田中広輔 0.262 0.238 0.458
30:筒香嘉智 0.295 0.237 0.827
31:京田陽太 0.235 0.237 0.037