BBANALY プロ野球データ分析

NPBのデータから、野球に関する議論や迷信を検証していくブログです。

「状況による打撃アプローチの使い分け」の効果【前編】

状況に応じたバッティングの是非

「ここはランナーもいないので、一発狙っていいんじゃないですか」、「ここは最低でもランナーを進めたいですね」など、状況に応じて打撃アプローチを変えるという考え方は、プロ野球中継でもお馴染みです。ランナーがいる場合、そのランナーを返すことを優先した戦術をとるのは、自然な考え方のように思えます。

しかしながら、送りバントの有効性に関する議論では、目先の1点を求めるあまり、全体の得点が少なくなってしまう結果も生じており*1、必ずしも状況に応じて打撃アプローチを使い分けることが全体の得点の増加につながるとは思えません。

そこで今回は、「状況に応じた打撃アプローチの使い分けが全体の得点にどのような変化をもたらすのか」を検証したいと思います。なお、全文書ききっていないので何ともですが、全3篇くらいを予定しています。前編と後編に分かれています。

 

※状況に応じた打撃に関する記事の1つに、市川さんが書かれた「状況に応じた打撃はどこまで可能か」があります。とても興味深く面白い記事でした!

 

検証方法

 今回の検証では、「打撃アプローチに変化がない打者で構成した打線」と「打撃アプローチに変化がある打者で構成した打線」の得点分布の比較を行う必要があります。実際の試合のデータから検証を行うことは困難ですので、今回も野球シミュレータを使って検証を行っていきます。

野球シミュレータに関する詳しい説明は、別記事で説明しているので詳しくは割愛します。

hihrois-1104o.hatenablog.com

簡単に説明すると、打線を構成する各打者の打撃成績を入力することでランダムに打撃が行われ、それに伴ってランナーが遷移していく、といった単純なものです。各打者は、[単打, 2塁打, 3塁打, 本塁打, 四死球, 三振, 凡打数] によって表現されます。

 

モデル化

まず、モデルとなる打線として、昨年度のパリーグでチームOPSがリーグ中位程度(3位)であった楽天打線をベースとします。具体的には、チーム内打席数TOP8が全員スタメンに入っている2019年9月14日のスタメンをベースとします*2

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ベースとする打者成績

OPSがなだらかに繋がっており、いい感じです。

次に、「状況による打撃アプローチの使い分け」の表現を考えます。あまり緻密な場合分けをしてしまうと一般性に欠けますし、そもそもこのような方法での検証はあまりされていないと思うので、今回は比較的簡素に行います。具体的には、打撃アプローチを、「出塁アプローチ」、「長打アプローチ」、「ノーマルアプローチ」の3つに分類します。

 

(1) 出塁アプローチ

長打よりも単打、四死球を優先して取りに行くアプローチです。発動条件は「ノーアウトランナー無し」または「得点圏にランナーがいる」とします。

 

(2) 長打アプローチ

単打、四死球よりも長打を優先して取りに行くアプローチです。発動条件は「ツーアウトランナー無し」とします。

 

(3) ノーマルアプローチ

(1)、(2)のいずれにも当てはまらない場合は、ノーマルアプローチとします。

 

 

発動条件は定義できたところで、次に各アプローチを具体的な数字に落とし込む必要があります。まずノーマルアプローチに関しては、そのままシーズン成績を用いて問題ないでしょう。次に出塁アプローチに関してですが、シーズン成績の値をベースとして、以下のように変換を行います。

※再掲: 個人の打撃能力は[単打数, 2塁打数, 3塁打数, 本塁打数, 四死球数, 三振数, 凡打数] で表現されます。

  1. 長打数を減らし、単打数と四死球数にその分を足し合わせる(打撃傾向を変化させる)
  2. 元のwOBAと等しくなるように、三振数と凡打数を減らす(個人の得点創出能力は保存する)

長打アプローチは出塁アプローチとは逆に、

  1. 単打数と四死球数を減らし、長打数にその分を足し合わせる
  2. 元のwOBAと等しくなるように、三振数と凡打数を増やす

とします。

2. に関しては解がすぐに求められますが、1. に関してはどれくらい長打数(単打数)を減らすか、すなわちアプローチの程度をこちらで設定する必要があります。程度については3段階くらい(弱・中・強?)用意する予定です。

 

ちょっと雑な感じは否めませんが、以上のような変換を行うことで、打撃アプローチの使い分けを表現することとします。(もっと上手なモデル化があったらぜひ教えてください!こちらまで↓)

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次回以降では、シミュレーションを回して、実際に数字を取っていきたいと思います。長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。

 

後編↓

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